2023年5月5日
ストレスは万病のもと、腸内環境にも影響を及ぼす
自律神経とホルモンについて
今から110年前ノーベル生理医学賞を受賞されたアレキシス・カレル博士も心の重要性を説かれておりますが、腸内環境にも良い影響、悪い影響を及ぼす自律神経とホルモンについて説明します。
自律神経は、主に内臓や血管、呼吸器官などの機能を調整するための神経であり、私たちが意識しなくても自然に反応し、働いている機能になります。
自律神経は交感神経と副交感神経の2つの部分から成り、それぞれが異なる役割を担っています。
交感神経は、ストレスや興奮などの状況下で活発になり、心拍数や呼吸率を上げ、血圧を上昇させ、血糖値を上げ、副交感神経は、リラックスや休息の状態で活発になり、心拍数や呼吸率を下げ、血圧を下げ、消化や代謝を促進します。
例えば自律神経が腸内環境に影響を与える事として、副交感神経はリラックスや休息の状態を促す働きで腸管運動を増加させ便秘の改善に役立つ一方、交感神経は興奮状態を持ち、腸管運動を減少させることで便秘を悪化させる可能性もあります。
またストレスや不規則な生活習慣などが交感神経を刺激し、腸内環境のバランスが崩れることもあります。
さらに腸内微生物が産生する物質や腸内の免疫細胞と自律神経が相互作用することで、逆に腸内環境が自律神経の調節に影響することもあります。
ホルモンは私たちの体内でアミノ酸とコレステロールから作られる血液の中を流れる化学物質であり、現在100種類以上発見されています。
ホルモンには、私たちの体の成長や発育、代謝、精神状態、生殖機能などに関わる役割があります。
体内でホルモンが作られる場所は内分泌臓器(内分泌腺)と呼ばれる場所で、例えば脳の中にある「下垂体」や甲状腺、副腎、卵巣、睾丸などがあります。
そしてホルモンは、腸内環境にも影響を与えます。
特に腸内ホルモンと呼ばれる消化器系で産生されるホルモンが、腸内環境に与える影響があり、腸内ホルモンには、グレリン、レプチンなどがあり、これらのホルモンは、食事の摂取や空腹感などを制御する重要な役割を果たしています。
たとえばグレリンは、食欲増進ホルモンと呼ばれ、胃が空っぽの状態で産生され、食欲を刺激する効果があり、一方、レプチンは、満腹ホルモンと呼ばれ、脂肪組織で産生され、食欲を抑制する作用があります。
また腸内環境がホルモンの調節に影響することもあり、これらのホルモンは腸内環境によっても制御されており、腸内の善玉菌が増えるとグレリンの分泌が減少することがあります。
そして腸内環境が悪化すると炎症が起こり、腸内ホルモンの分泌に影響を与えることもあります。
コルチゾールとは
コルチゾールは、ストレスホルモンと呼ばれ、私たちの体内で作られるホルモンの一種です。
例えば、私たちが試験前やスポーツ大会前など、緊張感やストレスを感じたことがあると思います。
そんな時、体内ではコルチゾールが分泌されます。
コルチゾールは、ストレスに対して身体を守るために必要なホルモンで、次のような働きがあります。
・血糖値を上げる:コルチゾールは、膵臓からのインスリン分泌を抑制し、肝臓からのブドウ糖の分泌を促進することでエネルギーを補給します。
・免疫機能を低下させる:コルチゾールは、ストレスによる細胞の損傷を防ぐために一時的に免疫機能を低下させます。
・炎症を抑制する:コルチゾールは、炎症を引き起こすサイトカインという物質の分泌を抑制することで炎症を抑えます。
つまりコルチゾールは、私たちがストレスを感じた時に、身体を守るために働いてくれる大切なホルモンですが、長期間にわたってストレスを感じ続けると過剰に分泌され、身体に悪影響を与える可能性が大きいと言うことになります。
ノルアドレナリンとは
ノルアドレナリンは、集中ホルモンと呼ばれ、私たちの体の中でエネルギーや注意力、ストレス対応などに関係している物質です。
例えば、夜道を歩いている時に、後ろから物音が聞こえた場合、私たちの体は「何か危険なことが起こりそうだ」と感じ、ノルアドレナリンが放出されます。
ノルアドレナリンが放出されることで、私たちの心拍数や血圧が上がり、筋肉が収縮して体が戦闘態勢に入ります。
これによって必要な場合には、逃げたり戦ったりするためのエネルギーが体内に準備されます。
つまりノルアドレナリンは、私たちが危険な状況に直面した時に、体を守るために働く物質であるという事になります。
成長ホルモンとは
成長ホルモンは、すこやかホルモンとも呼ばれ、私たちが成長するために必要なホルモンの一種です。
成長ホルモンは、脳下垂体というところから分泌され、骨や筋肉、内臓などの細胞に働きかけて成長を促進します。
例えば、私たちが小学校の時に比べて、中学校に入った頃には、身長が伸びていたり、体が大きくなっていたりしたと思います。
それは成長ホルモンが働いて、体の細胞を成長させたからです。
また成長ホルモンは、新陳代謝を促進、脂肪を分解する効果もあり、成長ホルモンが分泌されることで、体脂肪が減少し、筋肉量が増加することが期待できます。
ただし、成長ホルモンは睡眠中に分泌されるため、睡眠不足やストレスなどで分泌量が減少することがあります。
インスリンとは
インスリンは、倹約ホルモンとも呼ばれ、私たちの体の中で血糖値を調節するために作られるホルモンの一種です。
例えば、私たちがお菓子を食べたとき、体内にはブドウ糖という糖分が入ってきます。
ブドウ糖は、エネルギー源として重要な役割を持ちますが、過剰なブドウ糖は血液中に残り、血糖値が上がる原因となります。
ここでインスリンが重要な働きをします。
インスリンは、膵臓から分泌され、血液中のブドウ糖を細胞に取り込むように指示します。
細胞がブドウ糖を取り込むことで、血液中のブドウ糖濃度が下がり、血糖値が正常値に戻るのです。
つまりインスリンは、私たちが食事をしたときに、体内のブドウ糖を上手にコントロールしてくれるホルモンという事になります。
セロトニンとは
セロトニンは、幸せホルモンと呼ばれ、私たちの体内で作られる神経伝達物質の一種です。
例えば、私たちが楽しいことをしている時、セロトニンが分泌され気分が高揚します。また睡眠中にもセロトニンが分泌され、深い眠りをサポートします。
セロトニンは、原料であるトリプトファンの入った食べ物からも摂取することができますが、運動や日光浴、マッサージなど、リラックスした状態を促すこともセロトニンの分泌を促進することができます。
つまりセロトニンは、私たちが幸せやリラックスした状態を感じるために必要な神経伝達物質になります。
しかしストレスや不安などの精神的な負荷がかかり過ぎると、セロトニンの分泌が低下し、うつ病などの精神疾患につながることがあります。
ドーパミンとは
ドーパミンは、快楽ホルモンと呼ばれ、私たちの体内で作られる神経伝達物質の一種です。
例えば、私たちが好きなゲームをクリアした時や美味しいご飯を食べた時、ドーパミンが分泌され快楽を感じます。
またスポーツや音楽など、興奮状態にある時にもドーパミンが分泌され、やる気や集中力を高めます。
ドーパミンは、ストレスや不安などの精神的な負荷がかかると分泌が低下し、やる気や集中力が低下することがあります。
しかし適度な運動やリラックスした状態を作ることで、ドーパミンの分泌を促進することができます。
つまりドーパミンは、私たちが楽しいことをしたり、達成感を感じたりするために必要な神経伝達物質になります。
しかし過剰にドーパミンが分泌されると、中毒や精神疾患などの問題を引き起こすことがあります。
上記のことから腸内環境にも影響を及ぼす自律神経とホルモンについての重要性につきましては、食や運動だけでなく、生活習慣の中でのリラックスすることの大切さも分かっていただけたかと思います。
人間の五感である嗅覚など、いわゆる香り、アロマテラピーには、精神を落ち着かせたり、リラックスさせたりする効果があります。
この効果は、脳内のホルモンや神経に働きかけて起こります。
例えば柑橘系の香りは、ストレスホルモンのコルチゾールを減らし、リラックスさせ、またミントの香りは、副交感神経を刺激して、リラックスや安眠を促すと言われますので、現代のストレス社会には香りなども生活の一部に取り入れることが自律神経やホルモンバランスには大切だと考えます。